コミュニケーションメディア 原島
13:00 工2・241
あらためてメディアの時代を考える
新しい科学をプロデュースするということ
−ダ・ヴィンチ科学の提唱とその難しさ−
個人的に力を入れてきたこと
- 文理に区別のない自分なりの新しい学問分野を創設すること
- 文理の区別のない新しい大学組織
顔学
- 目の前の等身大の科学
- 感性の科学
- 社会に開かれた科学
- 文理にまたがる学際科学
ダ・ヴィンチ科学へ
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)
芸術家であり万能の人
いま、まさにダ・ヴィンチ的な科学が求められている
なぜダ・ヴィンチ科学なのか?
- 科学技術そのものの閉塞・限界
- 科学技術に対する国民の意識の変化
- 科学技術そのものへの不信感
→学際的な新たな科学の模索
学際科学の諸相
- 〈手法〉が求心力の学際科学(type1)
- 〈対象〉が求心力の学際科学(type2)
研究の対象 | |||
---|---|---|---|
限定 | 多彩 | ||
アプローチ(手法) | 限定 | これまでの科学 | type1 |
多彩 | type2 | 科学になり得ない? |
研究には3通りの形がある
- 輸入型研究 自分の分野に、新しい考え方や技術を輸入して、活用する
- 輸出型研究 他の分野に、新しい考え方や技術を輸出して、影響を与える
- 鎖国型研究 その分野に閉じこもって、理論・技術の体系化と純化を図る
学際科学の難しさ
- 幅広い知識が必要
- 先行研究がない
- 方法論が手探り
- 論文になりにくい
- 発表の場がない
- 研究の評価が難しい
- アカデミズムにおける地位の確保に結びつかない
学際型学会の難しさ
- 文化の違い、思惑の違い
- コミュニケーションの難しさ
- 研究レベルの維持
- 運営を担う人材不足
- 学会としての認知(学術会議に登録できない) 既存の学術分類におさまらないから
もっと本質かもしれない問題
ダ・ヴィンチ科学は、専門知から総合知へ、理性知から感性知へ
専門分化は、近代科学の必然 総合知は科学となりうるか?
感性は科学の対象となりうるか? 芸術と科学の融合は可能か?
科学的知の条件
- 実証(再現)が可能であること(結果について疑いの余地がないこと)
- 論理的に体系化されていること(さらなる発展が可能であること)
- 積み上げができること 100%
- 実証が可能でないものは科学の対象ではない。
- 論理的に体系化できないものは科学の対象ではない。
- これまでの科学は、実証性と論理性を、どのように保証してきたか
専門研究者のコミュニティ(学会)が保証
一般の人には、研究の再現性と論理性の評価は無理
→専門の研究者コミュニティに評価を委託
→認められると専門のジャーナルに論文掲載
評価:論文数、引用数、インパクトファクター
専門的な確固とした研究コミュニティが存在しない分野は、科学にはなれない。
成果を発表できる権威あるジャーナルがない分野は、科学になれない。
科学(サイエンス)とは何か?
- ラテン語のスキエンティア(scientia:知)に由来
- ニュートンの時代は、もともとは「自然哲学」
- 16-17世紀に「実験的方法に基づく実証的知識」として、近代科学の方法論が確立
- 19世紀に「科学の制度化」(専門分化、職業化、科学教育、学会組織の整備)
- 19世紀半ば-20世紀:「アカデミズム科学」から「産業化科学へ」
いま「産官学連携」の名のもとに、科学と技術の結びつきが強まっている
ノーベル賞
1901年創設、物理学賞、化学賞、生理学・医学賞、文学賞、平和賞、経済学賞
自然科学系3賞(物理学、科学、生理学・医学)は、1901年当時にすでに確立された学問分野
もともと工学にはない。
20世紀になって生まれた新しい科学はない。
産業化科学でもない ノーベル賞科学でもない 新しい科学を、どう推進するか?
- 学としての体系化(大前提)
- 産業界への貢献
- 研究者の組織化(学会、大学組織…)
- 研究発表の場の整備(ジャーナルの発行…)
- 研究者養成のための教育体制の整備
- 権威ある賞の創設
- 国民へ直接訴える
科学プロデューサの要請
科学(技術)にも、アクターとディレクター、そしてプロデューサがある
アクター(俳優)としての研究者
ディレクター(監督)としての研究指導者
プロデューサ(企画制作者)としての研究分野創設者
なぜ、科学プロデューサなのか?
これまでの伝統的科学は、与えられた目標へ向かって、トップを走ることが重要であった (競争レーンが決まっている)
これからの新しい科学は、目標そのものを自ら設定して、その道筋を示すことが必要になる
科学プロデューサ
新しい科学のデザイン ダ・ヴィンチ集団の組織化
視野、学識、人望、人脈、商才……
科学メディエータ(インタプリター)
社会と学界を結ぶ仲介者、調停者
科学技術ジャーナリスト、科学技術評論家、売れっ子マスコミ学者……
学際的スペシャリストと専門的ゼネラリスト
- 学際的なスペシャリスト 他の分野の専門家と手をつなげるだけの学際的な知
- 専門的なゼネラリスト 異分野をつないで新しい学問分野をつくれる人
科学プロデューサには何が必要か
- まずは手をつなぐこと
- 手をつなげるだけの広い学識
- 相手に尊敬される深い専門
- 人から信頼される人間性
- 人のネットワークの組織能力
- 新しい分野への好奇心
プロデューサの条件(堺屋太一)
- 諦めないこと
- 怒らないこと
- 譲らないこと
- 疲れないこと
- 自慢しないこと
夢のストック
人に笑われるような荒唐無稽な夢であっても 夢のストックさえあれば…
いつかは追い風が吹く。それにのって夢を実現できる。
夢は財産である。