組織学習システム論 中原

13:00 工2・93B1

知識創造経営論:暗黙知形式知を交流せよ!

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ディスカッション

テーマ:ファイブ・フェイズ・モデルに学際情報学府を当てはめたとき

  1. 何が足りていないのか
  2. どう補えば上手くいくのか

これまでも何度か、経営理論を大学の組織に当てはめて考えてみるというテーマがあった。しかし、これはなかなかうまくいかないと思う。その理由は、単に学生の社会人経験の有無に左右されるからだけではない。大学の経営の成員は教職員だからだ。学生は、組織の一時的なメンバーでしかなく、組織の経営に直接、間接にも参画できないし、経営情報にアクセスできない(しようとしない)。
「企業は共通目的があると思ってる? みんな別々の業務(研究)をそれぞれの部署(研究室)で、やってる。だから、企業も大学も同じじゃないの?」という意見もあった。しかし、まさに企業は共通目的を持っている。利潤追求、株主還元、社員の生活保障、社会貢献、…。企業の経営は、社員自身の生活に直結している。
「経営」を、「教育・学習」にスライドして考えれば、語れるのかな。それでも、ちょっと無理がある気がする。

私自身の短い中小企業の会社員時代を振り返ると、組織の経営状態は常に頭の片隅にあるトピックだった。毎月、全社で部署毎の売上状況の回覧があって、所属部署に限らず、会社全体の状況を社員は把握していた。
社員は、組織の経営の状態を常に意識しながら、日々の業務に向かっている。そして、「自組織の社会での位置づけ」をも常に意識している。組織の位置に敏感な人たちは、転職や独立も視野に入れて働いている。
企業によっては、売上レポートは毎月ではなく毎日みているところもあるだろう。上場企業なら、株価や四半期決算もあって、さらに身近ではないだろうか。(もしかしたら安定した大企業になると、逆に遠くなるのかもしれないけれど)

そう考えると、大学の経営が自分の生活と直結していて、経営を切実な問題として捉えうる人々は、まずは教職員ということになる。学生も、大学の経営状態の影響をもろに受ける存在だけれども、経営へのアクセスは容易ではないため、組織の成員まではいかず、「半成員」程度でしかないのではなだろうか。なので、もちろん教職員の視点に立てば、大学を対象として経営理論を議論できるのだけど、学生中心の視点だと、うまく議論できなくなってしまう。

Wrap-up

知識創造理論

  • 日本発の経営理論
  • 日本が注目されていた時代背景
  • 戦略、意思決定スピードを重視する横書き経営学へのアンチテーゼ

知識創造理論への批判

  • 研究方法論 実証されていない
  • モデルの当てはめ
  • 構成要件がわからない SECIモデルの4つは必須なのか
  • IT業界の売り文句

企業と知識を結びつけた功績は大きい。
なぜ、「学習」ではなく「知識創造」という言葉を使ったのか。

全文献リストは、こちらのシラバスで公開されています
http://www.nakahara-lab.net/blog/2008/02/post_1158.html